TOP > 出版物・指針 > ヒューマンエラー事故対策事例集 第1章

 

第1章 高圧ガスの出荷及び受け入れ作業時の事故

 

事故例Ⅰ タンクローリーへの充てん作業中の誤発進

 

発生場所 富山県
発生日 平成8年3月1日
事故の概要 液化塩素タンクローリー充てん場において、充てん作業中に運転手がタンクローリーを誤って発進させたため、タンクローリーに接続された充てん及び均圧の銅管が破損し、液化塩素及び塩素ガスが漏えいした。運転手が付近の作業員に助けを求め、作業員は緊急遮断弁を作動させるとともにバルブを閉め、漏えいを止めた。 漏えい直後にガス漏れ警報器が作動した。また、作業員が石灰を散布し、除害した。
被害の状況 ・付近住民からガス臭の苦情
・タンクローリーへの接続配管の破損
事故の直接的原因 充てん作業員から充てん作業が終了した旨の伝達を受けた後、タンクローリーを発車させることになっていたが、充てん中であるにもかかわらずタンクローリー運転手は、充てん作業が終了したものと勘違いし発車させた。
事故の状況から推定される事故の誘因及び問題点
  1. 運転手は、当日、予定になかった運転業務を急きょ処理することになり、気持ちが焦っていた。
  2. 充てん担当者が監督することになっていたが、あいにく目を離していた時であり、運転手の行動に気づくのが遅れた。
  3. 運転手は、タンクローリー前部と運転席ドアの「充てん中」の表示及び車止めを外して発車しており、本人の思い込みを気付かせる二重の安全対策が取られていなかった。
事故防止対策
  1. 作業操作基準の見直し
    ・従来からの、「充てん中」の看板掛け、車止めの実施の他、新たに、充てん担当者が充てんを完了し、出発確認が終了するまでの間、タンクローリーのエンジンキーを預り、保管管理する。(保管ボックスに収納し、チェックもできるようにする。)
    ・充てん終了後、従来、充てん担当者のみで接続部等のガス漏れの有無を確認していたが、運転手と共同で実施する。
  2. 運送会社管理者に対する指導及び運転手、充てん担当者に対する作業操作基準書の再教育の実施
  3. 指差呼称など誤操作防止活動の徹底
  4. 勘違い、誤操作、省略行為は常に起こり得るものであり、再発防止対策が遵守されているか日常点検や定期パトロールを実施するとともに、従業員に対する教育を実施する。
事故の教訓 人の行動は常識を超える。二重、三重の誤操作、誤判断防止対策を。
   

 

 

事故例Ⅱ タンク車への充てん作業中の誤発進

 

発生場所 富山県
発生日 平成11年12月20日
事故の概要 工場内の液化アンモニア充てん所のタンク車(25t積み)充てん設備において、液化アンモニアの充てんを開始した。 タンク車への充てんを一時停止し、タンクローリーへの充てんに切り換えた。タンクローリーへの充てんが完了したため、再びタンク車に充てんを開始した。 タンク車への充てん中にタンク車が動き出したため、接続中の2インチフレキシブルホースが断裂し、タンク車側と充てん設備側からアンモニアが洩れた。充てん設備側とタンク車側の緊急遮断弁を閉めて、アンモニアの漏えいを止めた。
被害の状況 ・付近住民からアンモニア臭の苦情 ・充てんフレキシブルホースの破損
事故の直接的原因 タンク車への充てん中に、タンク車を動かしたため。
事故の状況から推定される事故の誘因及び問題点
  1. 作業員相互の連絡の不徹底
    ・充てん作業員とタンク車操車員との連絡がなされていなかった。
  2. タンク車移動前の確認の不足
    ・タンク車への充てん完了の確認が不十分であった。
    ・タンク車操車員が充てんホースの接続状態を確認しなかった。
  3. 表示等が不明確
    ・タンク車に充てん作業中の表示がなされていなかった。
  4. 作業員に「充てんが既に完了した。」との思い込みがあった。
事故防止対策
  1. 作業指針の見直し(作業の引き継ぎ方法の明確化)
    ・充てん完了の表示を明確にするとともに、充てん完了後のタンク車を移動する場合には充てん作業員とタンク車操車員の両者が立ち合いでチェックリスト等により確実に作業前点検をするなど、引き継ぎにおける作業指針を見直す。
  2. 設備の変更
    ・充てんホースが接続されている間は自動的にパトライトを点灯させるなど、充てん作業中であることが明確に確認できるような表示装置を設置する。
  3. 教育等の実施
    ・改訂後の作業指針を作業員に教育し、作業手順を確認させる。
事故の教訓 危険は作業境界に潜むもの。
   

 

 

事故例Ⅲ コンテナ車への充てん作業中のフルオロカーボン噴出

 

発生場所 大阪府
発生日 平成10年8月19日
事故の概要 代替フロンを出荷するために貯蔵タンクとコンテナ(容量6.5t、トラックに搭載)の間にステンレス製のフレキシブルホース(口径50A、長さ5m)を接続して、追加充てんしようとしたところホースが破裂し、作業員2名が負傷した。充てんはコンテナの液面計を見ながら行い、満液状態近くなったので別の場所にあるトラックスケールで計量するため充てん作業を一時中断した。残りの代替フロン0.2tを追加充てんするためフレキシブルホースを抱えた時に発生している。作業を中断した間に(約20分)気温の上昇によりフレキシブルホース内が液封状態となったため、経年劣化していた箇所が破断したものとみられる。
被害の状況 ・作業員2名の負傷 ・フレキシブルホースの破損
事故の直接的原因
  1. フレキシブルホースが液封状態になった。
  2. 操作手順が明確に定められていなかった。
  3. フレキシブルホースの経年劣化
事故の状況から推定される事故の誘因及び問題点
  1. 操作基準の不備
    作業者はコンテナの充てん量が不足した場合、今まで今回と同様の手順で作業していたことから、液封状態における危険性について操作基準に明記されていなかった。
  2. 設備の維持管理の不良
    フレキシブルホース等可動する状態で使用する配管類の設備管理が行われておらず、始業前点検も実施されていなかった。
事故防止対策
  1. 液封状態防止のための設備変更
    液封状態にならないよう、ポンプの出口側配管に戻しの配管を設置する。
  2. 液封防止操作基準の明確化
    液封状態になると、配管類に強大な圧力がかかることになるから、あらかじめ操作基準に液封防止の手順を明確にしておく。
  3. 設備点検の実施
    ・フレキシブルホース等可動する状態で使用する配管類の検査計画を定め、定期検査及び定期交換を行う。
    ・始業前にフレキシブルホースの損傷、劣化に関する作業前点検を必ず実施する。
事故の教訓 危険は作業境界に潜むもの。

 

 

事故例Ⅳ タンクローリーからの受け入れ作業中の塩素ガス漏えい

 

発生場所 埼玉県
発生日 平成12年4月21日
事故の概要 浄水場の職員2名(うち1名は、作業研修中。)と液化塩素タンクローリー運転手の計3名で液化塩素受け入れ作業を行っていた。操作マニュアルに従い受け入れ導管のエアーパージまでは職員2名で同一作業を行っていたが、その後の受け入れ導管を接続してガスリークテストを実施するための作業を、マニュアル手順と異なり、2名は別々に手分けし並行して作業を行っていた。
1名の職員は、自分が接続を終わったので、他の1名も接続が終わっていると思い込み、リークテストのため受け入れ配管の入口弁を開けたが、接続が終わっていなかったローリー側から塩素ガスが漏えいした。
塩素臭で漏えいに気づいた職員は直ちに入口弁を閉めるとともに貯槽側の緊急遮断弁を閉じ、運転手と職員は屋外に避難した。漏えいした塩素ガスにより職員2名が軽い中毒にかかった。
参考: リークテストの方法は、①実ガスを通して実施、②空気を通し実施、③窒素ガスを通し実施など、受入設備による違いがある。
被害の状況 ・職員2名ガス中毒
事故の直接的原因 並行して接続作業をしていた他の職員が導管の接続が終了していないのに、導管の接続が終わったものと思い込み、受け入れ配管の入口弁を開けたため。

事故の状況から推定される事故の誘因及び問題点
  1. 共同作業で行うマニュアル手順を守らず、作業を分担した。
  2. 作業分担したにもかかわらず、お互いの作業状況の確認や相互連絡を怠り、次の作業に入った。
  3. 共同作業者が研修中という状況にもかかわらず、指導という観点が欠如した。さらに相手の作業能力、作業スピードを誤認した。
事故防止対策
  1. 操作マニュアル手順の遵守など、再教育の実施
  2. 共同作業の責任者の明確化
  3. 並行作業時の連絡、合図などの徹底
  4. 指差呼称など誤操作防止活動の徹底
  5. 研修期間中の指導マニュアルの作成
  6. 研修者に実作業体験させる場合は、指導者は作業内容の指導、確認を行う。
事故の教訓 教育は手取り、足取りで一人立ち。
    

 

 

事故例Ⅴ タンクローリーの異常発進による配管破損・漏えい

 

発生場所 熊本県
発生日 平成11年10月8日
事故の概要 機械工場の液体窒素貯蔵タンクに窒素を充てんするため、タンクローリーが到着し充てん停車位置に止まった。タンクローリー後部操作盤のエンジンスタートボタンが故障していたため、ギヤーをニュートラルとし、エンジンをかけたままの状態で運転手は下車し、後部操作盤で「クラッチ切レル」の操作を行った。充てん前準備作業中、運転手は、一度運転席に戻っているが、この時に、何らかの理由でギヤーが前進に入った。充てん前準備作業が終了し、後部操作盤の「クラッチツナグ」の操作を行ったところ、タンクローリーが異常発進し、約10m走行し、建物に接触して停車した。窒素配管を損傷し、窒素ガスが噴出、漏えいしたので、バルブを閉止し、漏えいを止めた。
なお、後部操作盤のニュートラルランプは球切れしていた。
被害の状況 ・窒素配管、フェンス及び建物の損傷
事故の直接的原因 タンクローリー後部操作盤のニュートラルランプが消えているのは、球切れのためで、ギヤーはニュートラルである(実際には、ギヤーは前進に入っていた。)と判断し、後部操作盤で「クラッチツナグ」の操作を行ったため、タンクローリーが異常発進した。
事故の状況から推定される事故の誘因及び問題点
  1. タンクローリーの整備不良
    後部操作盤のニュートラルランプの球切れ及びエンジンスタートボタンの故障を以前から知っていながら点検整備を怠った。
  2. 作業者の操作不備
    エンジン駆動車を使用する場合、ギヤーはニュートラルであることを確認することが重要であるが、これを怠った。さらに車止め及びサイドブレーキが緩かったことが事故を大きくした。
事故防止対策
  1. 運行前に操作盤などを確実に点検し、不備がある場合は運行を停止し、速やかに修理を行う。インターロックが正常に作動しているか定期検査を怠らない。
  2. タンクローリーを充てん位置に止め、充てん作業を始める前に必ずエンジンを止め、周囲の安全を確認する。また、操作手順を誤らないよう日頃の教育訓練を行い、指差呼称の実行も習慣化する。
  3. 車止めを確実に行い、且つサイドブレーキの確認も忘れず行う。加えて、日頃から各種機器の維持管理に努める。
事故の教訓 小さな不良もすぐ修理、しばしの放置で大惨事。