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第2章 貯槽の開放検査時及び設備の修理作業時の事故

 

事故例Ⅰ 開放検査準備作業中の貯槽払い出し弁の不完全閉止

 

発生場所 富山県
発生日 平成11年10月13日
事故の概要 アンモニア貯槽の開放検査の準備作業として貯槽内の液化アンモニアを抜き取り、タンクローリーに移そうとして、操作員が払い出し弁を閉じ、ローリーホースをフランジ接続させるために、払い出し弁直下のフランジボルトを散水しながら緩めていったところ、アンモニアが漏えいした。 操作員が中央制御室へ通報するとともに、直ちに消火栓による散水を開始、また、作業員を退避させ、通行遮断、散水排水の構外流出防止の措置をとった。 漏えいから約2時間後、高所作業車で散水しながら空気呼吸器を装着した作業員が、工具で払い出し弁を増し締めし、漏えいは止まった。
被害の状況 ・付近住民からアンモニア臭の苦情
事故の直接的原因 貯槽払い出し弁を閉じた際に、閉止が不十分であったため、直下のフランジのボルトを緩めた時にアンモニアが漏えいした。
事故の状況から推定される事故の誘因及び問題点
  1. 作業前の危険予知が不十分であった。
    ・配管内にアンモニアが残っているままフランジのボルトを緩めた。
    ・弁の内洩れを予想していなかった。
    ・フランジを外す場所がよくなかった。
    (前弁二次側で取り外せば内洩れした場合元弁を閉止することで多量の漏えいが防げたと思われる。)
  2. 日常の点検で内洩れする弁が発見されなかった。
  3. 作業員は当該作業に対して「大丈夫だ」という慣れの意識が強かった。
事故防止対策
  1. 作業前の状況確認の徹底
    ・作業前には配管内の脱圧、液抜き等を行い、配管内の残圧やガス濃度等を確認する。
  2. 作業前の危険予知の徹底
    ・作業前には適切な作業方法、試用する保護具等についてよく検討を行い、さらに作業中に弁の内洩れ等が発生した場合の対処方法についても検討しておく。
  3. 設備の改善
    ・定期的に行う作業の場合は、適切な位置に抜き出し専用のノズルを設けるなど、設備改善を行う。
事故の教訓 配管、装置内の残圧、残ガスの確認は慎重に。

 

 

事故例Ⅱ 球形タンク開放検査中の圧縮機フィルターの破裂

 

発生場所 神奈川県
発生日 平成10年11月2日
事故の概要 事故当日は、工場の休業日で協力会社の作業予定も無い日であり、また、予め協力会社から事業所に対し安全装置が働かない状態で使用することが明記された作業手順書が提出されていた。
当日、協力会社の作業員は、無許可で入構し、作業手順に従い、液化炭酸ガス球形貯槽の開放検査のため、液抜き後小型圧縮機(ベビコン)を運転し、圧力2kg/c㎡のガス循環による昇温作業を行っていた。作業員が誤ってベビコンの出口側の弁を閉止したため、ベビコンから弁までのラインの圧力が上昇して付属品のフィルターが圧力に耐え切れず破裂し、この作業員が負傷した。
被害の状況 ・作業員1名が負傷
・ベビコン付属品のフィルター破損
事故の直接的原因
  1. 作業員が作業手順にない操作を行ってしまった。
  2. ベビコンの安全装置の解除
    ベビコンから油分等の汚れが貯槽に入るのを防ぐために、レシーバーにガスを通さないで使用していた。このため、ベビコンのアンローダー装置や安全弁が機能しない状態であり、出口側の閉止によって異常な圧力の上昇が起きた。
事故の状況から推定される事故の誘因及び問題点
  1. 責任管理体制の不備
    協力会社から事業所に対し提出された作業手順書には、安全装置が働かない状態で使用することが明記されていたにもかかわらず、事業所側からの指摘等はなく、工事の安全管理について十分なチェックがなされていなかった。
  2. 入構者管理システムの周知不徹底
    この事業所では、工場に入構する際は、許可を受けるシステムになっていたが、事故当日、協力会社作業員は、無許可で入構し作業を行った。また、出社していた事業所の保安担当者は、この日協力会社の作業予定が無かったため、被災した作業員が工場内に入り、弁の操作をしたことを把握しておらず、入構者管理のシステムが機能していなかった。
事故防止対策
  1. 事業所内で発生したことは事業所の責任であることを自覚し、協力会社の作業に対するチェック・指導・教育等安全管理を徹底する。
  2. 関係者であっても工場内へ無断で入構することのないように入構者管理を徹底する。
事故の教訓 協力会社の作業を、しっかりチェック!

 

 

事故例Ⅲ  貯槽バルブ補修作業中の塩素ガス漏えい

 

発生場所 山口県
発生日 平成12年1月20日
事故の概要 地下壕内の№5液化塩素貯槽(貯蔵能力:30t)の第1バルブグランド部から塩素ガスの漏えいが発見されたので、当該バルブの補修を行うために、バルブの一部(ヨークスリーブ)を分解していたところ、液化塩素約3tが流出し作業を実施していた作業者2名に飛散したものである。
被害の状況 ・作業員2名負傷(凍傷)
事故の直接的原因 №5貯槽が加圧状態にあるにもかかわらず、当該貯槽の元弁である当該弁のパッキンを増し入れするために、ヨークスリーブ締め付けナットを緩めたことにより、バルブシャフトがフリーの状態となり、バルブグランド部から液化塩素が漏えいし、流出したものである。

事故の状況から推定される事故の誘因及び問題点
  1. 作業の軽視及び知識不足
    塩素ガスの洩れが少量であったことから、グランドパッキン部の増し締めにより簡単に修理できると思い込み、適正保護具も着用せずにヨークスリーブ締め付けナットを緩めてしまった。
    ヨークスリーブ締め付けナットを緩めるとシャフトが偏りグランド部とシャフトの隙間が大きくなり、洩れが多くなることを理解していなかった。
  2. 作業管理の不備
    バルブからの塩素ガス洩れに対する適切な修理手順や異常時の連絡体制が不明確であり、高圧ガス設備に対する教育や危険予知訓練が不十分など作業管理に不備があった。
事故防止対策
  1. 高圧ガス設備の異常や不備を発見した場合の連絡体系、過去の災害事例及び想定される異常や不備に対する修理手順書を作成する。
  2. 異常や不備を発見した時は、自分独自の判断で修理作業などを行わず、決められた連絡体系、修理手順に従って処理を行うなどの指導・教育を徹底する。
  3. 高圧ガス設備に対する教育や訓練を繰り返し行い、作業のチェック・指導・教育を怠らず安全管理を徹底する。
事故の教訓 思い込みは事故の元
   

 

 

事故例Ⅳ 球形タンク液入口ノズルフランジ部のガス漏れ補修作業中の火災

 

発生場所 鹿児島県
発生日 昭和59年8月30日
事故の概要 LPガス300t球形タンクの液受け入れライン元バルブフランジからの漏れを修理するためボルトを緩める作業を行っていたところ、配管内の残留ガスが漏えいし、電動式インパクトレンチの火花が、漏えいしたガスに引火し火災となった。
被害の状況 ・作業員2名ガス中毒
・フランジ、バルブ等損傷
事故の直接的原因 漏えいした箇所を修理するため、ライン内の窒素置換をしようとして、タンク内に2回窒素ガスを送入したが、系内にLPガスが残ったので大気中に自然放出させた。その後フランジのボルトを緩めようとして、インパクトレンチを用いて作業をしていたところ、このインパクトレンチが防爆型でなかったため、LPガスがその工具の火花で引火し、火災になったものと考えられる。
事故の状況から推定される事故の誘因及び問題点
  1. 作業管理の不備
    可燃性ガスの漏れ修理に対する教育、指導が充分でなかったため、被災者は可燃性ガスの特性を知らないまま安易に作業を進め、防爆型でない電動式インパクトレンチを使用した。
  2. 保安管理体制の不備
    可燃性ガス貯蔵しょにおける火気等の使用については、高圧ガス保安法により厳しく制限されており、漏れ修理についても細心の注意が必要であるにもかかわらず、保安係員の職務が遂行されておらず、保安管理体制が機能していなかった。
事故防止対策 可燃性ガスの置換作業、防爆区域内の工具使用等の作業基準や修理を行う場合の設備管理基準を明確にし、思い込み作業の防止を図るための教育、指導の徹底を図る。
なお、非定常作業に於ける安全衛生対策については、労働省通達(平成8年6月10日付け基発第364号)「化学設備の非定常作業に於ける安全衛生対策のためのガイドラインの策定について」を参考に、対策を検討すること。
事故の教訓 いつまでもあると思え残留ガス。